節のある杉板を平気で使う理由

イシハラスタイルが目指すのは「現代の民家」
民家と聞くとイメージは人それぞれでしょうが、私たちが目標としているのは現在「古民家」と言われて壊してしまうのがもったいなく思えるような建物の現代版とでもいうものです
現在、無理なく供給がされ続ける建築材料のうち、古民家と言えるぐらいの年数を耐えられるような造りをしたものです。それには手を入れる(治したり取り替えたり)ことは必要ではありますが、それができるだけ最小限で済むものを使うことは本当の意味で持続可能な家としての条件だと思っています
家で大きな面積を占める
- 外壁
- 屋根
- 室内壁
- 床
- 天井
これらは、どんな仕上げ材料を使うかによって、耐久性も違えば作り方も違う、また値段もちがいますし
メンテナンスの周期も違います
一番の違いは「風合い」
みなさんは、普段洋服を買う時にどんな風に選びますか?食事の材料を選ぶときに注意していることはありますか?
着る物を選ぶときに、肌触り、汗の吸放湿、皺になりにくい、軽い、などを考えて選びます。もちろんデザインは大切ですが気に入ったデザインでも伸びないと窮屈だなとやめてしまう事も多いです笑
食事は体に入れるものなので、できるだけ安全性の高い作り方をされたもの、旬のものが良いなと思っています
では、家は?
適度な広さ、犬や猫がいても気楽で丈夫な素材、時間が経っても飽きない色使い、劣化しにくいもので作られたもの、移動や取替がしやすく作られたもの、温かく涼しく心地よい、窓からの景色が綺麗で季節を感じられる
衣食住の中でも、長期的に考える必要があるのが「住」の難しい所であり、服や食事のように自分の生きるコンセプトが変わってもステージが変わっても、建て替えや大きなリフォームをする以外に簡単には転向できないのが住まいです。
もちろんインテリアを変える事などは簡単にできるのですが、壁を変えよう、床を変えようと簡単ではありません。
だから、これにしておけば間違いないと思っている素材が「木」であり、特に杉が使いやすいものです。
衣・食と同じように考えてみると、木かなという感じです。優しい色合い、匂い、肌触り、強く優しく、安全です。
森林大国の日本で、だいたい何処の県に住んでいても無理なく手に入り続ける材料。
その中で、イシハラスタイルのお家を見ていただいても、杉は色々な場所で使い分けています。
杉材を使った例
構造にかかわる部分では、屋根の登り梁

室内の天井材・外部の軒天

外部の壁(外壁)

室内の床

室内の壁

窓枠・入口枠


例えば、洗面ボウルを付ける壁にも使ったりします
板は水に塗れるとカビが生えるから嫌うかたもいますがそうでもありません。一日で乾くように使えば、多少の水染みが出来る程度です。
実際、私たちも使用していますが、使用後に水が飛んだところを拭いておけば大丈夫。むしろ、濡れても大丈夫だからと常に水をふき取る習慣がないとコーキングのところでカビが発生しているのを見ます。
住まい方や、どのように保ちたいかによって汚れの度合いが違ってきますので、お客様とよく相談してきめていますが、お掃除が苦手だからといってしなくてもよいものはありません。どのような状態で、頻度で水気をとるかを知れば素材選びでも恐れる必要はないと言えます。
水に強いと言われる素材でも、経年劣化する設備を使った場合のほうが、修繕が大変になることも忘れないようにして欲しいです。
節のある材料とは
まずは節ってどうしてあるんだろう?
って考えたことがありますか?実は私も数年前まで知らなくて、むしろ節は木の枝の部分だから木の外側にしかないと思っていました。もちろん、その節もあるのですが実は太い丸太の真ん中にもたくさんあります。
木をまっすぐ育てるために、何年~何十年に一度枝打ちをします。まだ若くて細いときに枝を落とした部分は、何十年かかかって太く成長する間に内側に取り込まれていき見えなくなります。
そして太く大きくなって使うときに製材されると内側から現れます。ですので、大げさに言うとどこからでも出てくるものになります。だって木なのだから笑
しかし、その中でも枠材などは節の無い、いわゆる綺麗な部分を使うことでスッキリと見え適していると言えますが、ではそうした部分だけを使うとなると、製材の際に出来たものをより分けて節のある部分は下地材と言って見えなくなる場所でばかり使うことや、捨ててしまったりすることになります。
そうした建築もあると思いますが、イシハラスタイルが普段作ろうとしているのは「現在民家」なので、節のある材料も受け入れて使うことで、費用が上がりすぎることを抑え、より使ってもらいやすくできるのではないかと考えています。
というのは、使える場所だけを選んで材料に偏りがでてしまったり捨ててしまう必要がでれば、捨ててしまう部分はもちろんただではなく捨てる部分も使う部分に価格の転嫁がおこります。捨てるのにもお金はかかりますし、一本の丸太の費用は決まっているわけですから、使用できる部分が減れば値段は高くなります。
スーパーの野菜も、へたや芯を捨てるからと言って全体の値段を安くしてもらうことはできません。
それと同じです。
だから、できるだけ全部を使い切ることを考えたほうが木にも環境にも優しいですし、この考えが広がればいずれは値段にも反映してくるとおもいます。

注意する点
杉をたくさん使う際には、適材適所で使い方は場所によって選定することが大切です。
木を知り上手に使う、知識と経験がある程度必要になります。おおきくどの場所に、例えば外壁材なら杉の赤身の部分であるとか、登り梁なら芯さり材がよいとか選ぶ、イシハラスタイルですと天井や軒天は短い材料ですむので、今までは製材後の選定で捨ててしまうような部分が使用できるのではないかと供給側が配慮して仕分けしておいてくれたり、壁は節の無いすっきりとした見た目のものをより分けておくことや、似たような木目や色合いのものを現場でも仕分けして使うことができる大工がいるのかどうかでも出来上がりが違ってきます。
木を見て選ぶことができるからこそ、反りがでないように隙間がでにくいようにすることでも長い間のクオリティを保つことできるのです。
イシハラスタイルでも、いまでもどこにどういった杉板を使うか、場所によってどの厚みにするのが適しているか等は現場と製材側と相談しながら試行錯誤することもあります。時代によっても機械によってもできること、できないことが変わってくることもあり変更もあります。
木を余すことなく使い、現代民家として一般的にたくさん使ってもらえる様にするには、どうしたらよいかという取り組みとしても続けています。
三重県の野地木材さんに来社いただき、実際の現場で作業を見てもらいどのような材料がよいかをお話合いしました。
新しいヒントもみつかり、たくさんの人に協力いただければ費用だって安くなり、より使いやすくなる可能性を感じました。





通常は4mの材料として購入されることの多い板材ですが、壁の長さに合わせてカットして使うことも多いため、端材がますがもちろん捨てるものではなく、小さい壁に使ったりと工夫して現場では作業が進みます。
節が多くある部分をカットして少ない部分だけを貼っていくのは現場の大工さんの裁量による部分も大きいです。
考えながら作業をする気持ちのある大工さんがいるかどうかでも、現場の出来栄えがかわるのも事実としてありますので工務店選びでも職人さんとの関係性でも注意する点と言えるかもしれません。
技術は進みAIも発達しているでしょうが、今はまだまだ「作る人」の感性や考え方が作る物を変えてしまうぐらいの力があります。その作る人を選ぶのが大切であることも知っていただけたらとおもいます。





