季刊 イシハラスタイル vol.3

Kaemon Takanori Tsuzuki
嘉エ門 都築孝紀とイシハラスタイル 石原 真

作らずに作る 嘉エ門の作庭作法

石原:嘉エ門の作庭についての考え方は、
作庭のページでも説明していますが、言葉にしづらいところがあります。
作らずに作る、とか、作るというより自然に戻す、とか。
嘉エ門の庭づくりってそんな感じじゃないですか。
村澤さんと家づくりをやってみたいと思いました。

都築:ある家の庭づくりで、木を1本しか植えないことがありましたね。
もともとあった木を剪定したり、もともとあった石を使ったり。

石原:そこがいいところ。
要素は変わっていないのに、ぜんぜん違うものに見えるという、
嘉エ門の仕事がしっかりなされていますね。

(1) 近藤邸の庭



デザインの意味と機能 自然の恵みと叡智を生かす

都築:派手なことはしたくないという気持ちはありますね。
雑誌ウケがいいような庭がいい庭とは限らないし。
自然体だったり、建築の脇役だったり。
外観と一体になって町並みを形成するのが庭だと考えます。

石原:気取った木とか、トレンドっぽい木を都築さんは使わないですね。
基本に忠実というか、自然の摂理に逆らわないというか。
かといって凝り固まったことはなく、
現場やお客さんに応じた庭づくりを柔軟にやりますね。

都築:銘木を使った建築や銘石を使った庭園といった
昔ながらのやり方は今でもありますが、
それは見た目重視のやり方だと思います。
それに反対するわけではありませんが、僕がやりたいと思うのは、
庭のデザインに意味と機能を持たせることです。
地元の植生や石材を第一に考えるのもそういうことだし、
雑草を下草に使ってみることもこうした考えからです。

石原:自然や生態系に寄り添った思考ですね。

都築:自然の恵み、自然の叡智を暮らしや考え方に取り入れることだと思います。

(2) 黒木邸の庭



都築孝紀本人による 作庭の事例紹介

都築:イシハラスタイルで初めて関わったのが、
近藤邸(1) の「おばあちゃんの思い出がやどる庭」でした。
元からあった3本の木を生かし、お持ちだったレンガを使い、
近くのご実家から下草を分けてもらい生まれ育った
家と庭の眺めにつながりをもたせました。

黒木邸(2) の庭は、ヤブツバキ、クロガネモチ、
イヌマキなど、地元に生えている木を使いました。
奥様が野鳥が好きで、鳥の好きな実がなったり、メジロが花の蜜を吸う、
野鳥が集まる木を選びました。ちなみに、家庭菜園用のスペースの仕切りには、
以前の家の瓦を残しておいて使い、歴史を残しました。

早川邸(3) の庭は、お客様から「新しい感じ」
「芝生の庭」の希望をいただきました。
もともとあったシマトネリコは位置をずらして移植し、
木曽石もアプローチに並べました。
隣が奥様のご実家なので、早川邸でも下草はご実家からの移植です。

石原:建物、立地、お客様の考えに応じて最良の庭を考えてもらっていますが、
共通するのは、気取った木や流行りの木は使わないことですね。

都築:はい、そうです。

(3) 早川邸の庭



都築 孝紀
つづき たかのり
 

高校卒業後、オーストラリアを旅したのち、
日本文化の素晴らしさに目覚め、庭の仕事に従事。
2009 年に“ 作庭 嘉エ門”として独立。地元を活動エリアとして生活様式
に合わせたさまざまな庭づくりを提案し、住宅だけでなく、カフェや美容室
など各種ショップにいたるまで幅広く手がけている。また、庭以外にもショッ
ププロデュース、神楽奏者として多方面で活動している。
西尾市一色町に住まう一人として、子供の学校や町内の活動にも積極的に
参加している。