季刊 イシハラスタイル vol.1

Matatabi Designer Kazuteru Murasawa
股旅デザイナー 村澤一晃とイシハラスタイル 石原

家具が変われば設計も変わる 家具デザイナー村澤一晃との家具づくり

石原:イシハラスタイルの家づくりで、
オリジナル家具開発をお願いすることにしたのは、
村澤さんの自宅にうかがったことがきっかけでした。
具体的にどうやって参画してもらうか何も考えついたわけではないのですが、
自宅に置かれた家具、家具が置かれた住まいを見て、
村澤さんと家づくりをやってみたいと思いました。

理想の家具づくりができるチャンス
それ以前に、鹿児島のベガハウスという工務店と交流があり、
あるとき「ベガハウスの家が変わった」と思ったことがありました。
造作ソファとか、その周囲のサイドテーブルとか。
工務店がよくここまでやるなと感心しました。
ソファが変わると住まいの設計まで変わるのか、と。
それが村澤さんとベガハウスの取り組みだと知ったのは後からのことでした。



現場でデザインを紡ぎだす ワークショップ方式の家具デザイン

村澤:イシハラスタイルでもベガハウスでも、
あるいはプロダクトを製造している家具メーカーとであっても、
僕のデザインのやり方は同じです。
デザインで求める目標やテーマを関係する人たちとで共有し、
現場で手を動かし、現場でデザインを一緒に検証しながら
目指すデザインを紡ぎ出していく方法を一貫して行っています。
それを、ワークショップ方式のデザイン開発と呼んでいますが、内容はそれぞれ違います。

家具デザイナーやプロダクトデザイナーがつくり出すものは、
大抵の場合、再現性のあるものです。
量産品はもちろん少数生産のものであっても、一つずつ受注生産するものであっても、
またつくることを前提としたものづくりということになります。

しかし、イシハラスタイルはたくさんの棟数をこなす工務店でなく、スタッフも物件も
少数精鋭という中で、自分がどのように関わったらいいかをまず考えました。

そのために、石原さんと会話を重ね、現場を見せてもらい、
イシハラスタイルを理解するためのアイドリング期間を経て、
2015年から具体的なワークショップを開始しました。
1年目の成果は、造作ソファが3つ、造作の1本脚テーブルが1つ、
そして、いま新しい開発テーマがいくつか見つかっています。



その空間のためにミリ単位で考える 究極の家具づくりができる

イシハラスタイルでやろうと決めたのは、 これまでの住宅づくりで解決できなかった問題を見つけ出し、
その解決ができる家具デザインをやろうということでした。
これまでは家具メーカーの家具デザインがほとんどでしたが、
ある意味、究極の家具は造作家具だと思っています。
その空間のため、そこでの暮らしのために、
ミリ単位で考えて家具がつくれる素晴らしいチャンスだと思いました。

すべての住宅の家具をそのように個々でデザインするのは理想的なことですが、
僕は自分で家のすべてをデザインし、設計できるわけじゃない。
反対に家づくりの全体はやっているけど、既製品以上の家具や暮らしの道具を
オリジナルでつくり出すことはままならないと考える工務店もあります。
そういう二者が出会い、おたがいの得意をぶつけ合って、
それぞれの良さを引き出し合う関係からより良い住まい、家具ができる。
そんなものづくりに取り組めるパートナーと出逢えたことは、
僕にとってとても魅力的なことなのです。

石原:村澤さんと現場に入って打ち合わせをしていると、
新しい扉が開く感じを何度も体験しました。
家具デザイナーならではの目線の違いをしばしば感じます。
家具と建築を行ったり来たり、出たり入ったり、頭の中がダイナミックに動くのを感じます。

地元にこだわるイシハラスタイルです。
村澤さんは、西尾でも三河でも愛知でもないけど、
股旅デザイナーですから全国どこでも地元ということで、
地元を大切にする家づくりにおつきあいいただいています。
実力と経験を兼ねそなえた家具デザイナー・村澤さんの持てるものを
イシハラスタイルの家づくりに取り込ませていただき、
町づくりに貢献し、豊かな家々をつくっていきたいと考えます。



村澤 一晃
むらさわ かずてる
 

1965年、東京生まれ。ICSカレッジオブアーツ卒業。
垂水健三デザイン事務所を経て、1989年イタリア留学。
1990年よりセルジオ・カラトローニ デザイン建築事務所(ミラノ)に勤務。
家具・インテリア・展示会会場を中心にデザイン。1994年、ムラサワデザイ
ン開設。「デザインは生活や行動のすべての中にある」を信条として、机で図
面を描くのがデザインではないことを実践。これまでに、世界の数百の工場
を歩きまわる。道を歩くとき、飛行機で移動するとき、稼働する工場を見つ
めるとき、誰かと会話するときに、そこからデザインを紡ぎ出していく。