雑草と下草
「この世に雑草は存在しません。皆名前があるんですよ。」
昭和天皇のお付きの方が「お庭に雑草が生えてきましたね」といった折に返されたお言葉です。
雑草とはいろいろな草をひっくるめた総称であって、どんな草でも名前はあります。
造園の中でも雑草と下草は明確な境界が存在するのですが、
雑草も下草も人の価値観によって付けられた総称です。
造園的に下草というものは有用な品種を指し、綺麗な実がなる、葉が美しいといったものです。
春の七草の中には、一般的に雑草と呼ばれる種類があります。
昔から食用にされてきたにも関わらず、雑草と呼ばれることには違和感を感じます。
庭園の必須条件に美しさがあります。
下草はそういった条件をクリアした品種のみに与えられた“称号”なのです。
皆さんもご存知のハーブは、そういった条件をクリアした立派な下草の代表格的な存在です。
花や葉が美しく料理に使ったりハーブティーやドライフラワーといった
オシャレなアイテムにもなり非の打ち所のない存在です。
同じもので日本では薬草、山菜、山野草といった表現の仕方をするので、
今ひとつ華やかさに欠けるところがあり、なかなか認知されないというかピンとこない。
しかし雑草と呼ばれる中にもドクダミ、ユキノシタなど薬用にされてきたものからツワブキ、
ギボウシ、ハランは昔から庭に植えられ、食卓にも利用された下草も存在するのです。
日本食が世界文化遺産に登録されたことは記憶にも新しいことですが、
今日だからこそ日本の食文化を形成してきた“雑草”にスポットを当ててみてはどうでしょう。

そこで食べるグラウンドカバー
一般的に雑草と呼ばれていた種類を庭に植えるというよりも容認、
共生してみてはどうでしょう。
ドクダミの白い花も生え揃うと本当に美しいものです。
フキはグラウンドカバーの中でもボリュームのある種類。
冬場地上部は消滅してしまいますが、
2月になるとフキノトウが出て春をつげると共に食卓を飾ります。
その瞬間しか食べられない贅沢な食材です。
ギボウシは日本庭園やイングリッシュガーデンにも利用され、
新芽は山菜のウルイで、花もお浸しに利用できます。
ボリュームがあり、葉も美しいので
グラウンドカバーに使いやすい種類です。
ハハコグサは。春の七草のゴギョウです。
春を感じる黄色い花が可愛らしく、
背丈が低くいため庭の中でも邪魔になりません。
高木の下に生えていても違和感なく成立し、
天ぷら等の食用になります。
ヨモギは一般的に雑草と呼ばれますが、
草餅・ヨモギ餅や薬草として日本の食文化では
重要な役割を果たしてきました。
身近に群生し地下茎で増えるため、
ドクダミと同様に厄介もの扱いをうけてしまいますが、
庭の一画をヨモギエリアにしてしまう手もあります。
 
雑草で見つける庭の価値
美しいグラウンドカバーは数多く存在します。
嘉エ門の作庭でも、実際に植えますし、美しい庭の重要な要素です。
しかし、ここで一つ提案です。
庭のグラウンドカバーにこういった雑草を使ってみてはいかがでしょうか。
雑草をグラウンドカバーにすることが、価値観を見つめ直すきっかけになり、
新しい発見がその先に見つかるかもしれません。
草を認めてあげることは、小さな自然を見つめ、
ありがたさや喜びに気づくことに繋がります。
季節によって生えてくる草の変化を知り、そこに集まる虫の違いに気づきます。
視覚的に見ていた庭が、ある時からそれ以外の感覚で
認識できるようになったとき、
新しい庭の価値を見出すことができるように思います。